長谷川智彩

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 長谷川智彩̶̶仏像や仏画の彩色の中でも最も荘厳で高度な技、截金(きりかね)の匠である。古代は「細金(ほそがね)とも呼ばれ、純金箔やプラチナ箔を何枚も焼き合わせ、毛髪ほどの極細に切って貼り付け文様を描き出す加飾の技だ。截金は磨耗することが少なく、輝きも衰えにくい。6世紀に仏教とともに伝来し、現存する最古のものは、「法隆寺金堂の四天王像」だ。
 長谷川は1969年3月、京都生まれ。銅駝美術工芸高校在学中に大仏師・松本明慶氏に出会い、仏師の仕事の一つ、彩色・截金に魅せられる。卒業後、松本工房に入り、文字通り寝食を忘れて鍛錬を積み、卓越した彩色・截金の技を習得する。
 2008年、截金師として新たな展望を求め拠点を東京に、そして現在は神奈川県三浦で制作活動を続けている。2014年、東京銀座で第一回「曼荼羅・神仏画展」を開催。この時に披露した「両界曼荼羅(金剛界、胎蔵生)」は、天眼鏡で確認を要するほど截金の超絶技巧が鏤められ、来場者を感嘆させた。
 今回、長谷川が最も力を入れているのが「千手観音菩薩」だ。千の手、千の目は観音菩薩が衆生一切を救わんと備えることを願って得た尊いお姿。その光背の焔(光)はラピスラズリの美しい瑠璃色で彩色、静謐な魂の昇華を具現化するような厳かさが漂う。
 ほか、銀座展で披露した「両界曼荼羅」一幅、NHKの依頼で制作したボストン美術館所蔵「馬頭観音像」復元模写作品など仏画の数々、「菊理媛神」「宮子姫神」などの神画。そして染色家・吉岡幸雄氏にご提供いただいた和紙に描く仏画も特別展示予定̶̶。